SCMR Japan WG Seminar 2026 / CMR Risk Stratification

非虚血性心疾患の
リスク層別化を
CMRで読み切る

尾田済太郎先生の講演資料をベースに、症例画像・埋め込み動画・スライド画像を抽出し、心機能・心形態、LGE、T1/ECV、T2/T2*がどのように臨床リスクへ変換されるかを、原理から疾患別意思決定まで再構成した完全解説です。

対象資料: 「非虚血性心疾患のリスク層別化」 2026年7月4日 SCMR Japan WG Seminar 2026。スライド内記載では、出典明示のない症例画像は自験例。

Title slide
抽出: 46 slides / 56 image assets / 6 cine-video assets

1. 講演の結論を一枚で

LVEFポンプ機能。HCMでは<50%、DCMでは≤35%が重要閾値。
LGE置換性線維化・瘢痕。不整脈基質と予後を反映。
T1 / ECVびまん性間質拡大、アミロイド負荷、Fabry/鉄の鑑別。
T2*鉄沈着の中核指標。LGE陰性でも重症を拾う。
臨床での翻訳: CMRは「形を見る検査」ではなく、形態・機能・線維化・細胞外容積・鉄/脂質/炎症の組織性状を統合して、ICD検討、遺伝子検査、治療導入、フォロー間隔の判断材料を増やす検査です。

2. 原理: CMRの4レイヤー

非虚血性心疾患のリスク層別化は、単純な「EFが低いか」から、何が心筋に起きているかへ拡張されています。CMRで見るべきレイヤーは以下です。

① Cine SSFP形態・壁厚・容積・LVEF/RVEF・心尖部瘤
② LGE置換性線維化・瘢痕・不整脈基質
③ T1 / ECVびまん性線維化・アミロイド・Fabry・鉄
④ T2 / T2*浮腫/炎症、鉄沈着
EF LGE ECV Cine shape / motion Tissue substrate / prognosis

3. T1/ECVマップで「心筋の中身」を読む

Native T1とECVは、LGEで見える焦点性瘢痕の外側にあるびまん性組織変化を定量します。講演では、心アミロイドーシス、Fabry、鉄沈着、反応性線維化、置換性線維化をT1/ECV平面で整理しています。

Native T1 → high ECV → high 鉄沈着 Fabry 反応性/線維化AS/HTNなど 心アミロイドーシスT1/ECV high 正常
T1 ECV map slide
抽出スライド: T1/ECVの疾患別ポジショニング。定量値は施設・機種・磁場・シーケンス依存のため、必ず自施設基準値で解釈します。
落とし穴: LGEが陰性でも、びまん性アミロイド沈着や鉄沈着は存在し得ます。逆にT1/ECVは万能ではなく、貧血・造影タイミング・hematocrit・MOLLI/ShMOLLI/SASHA差、3T/1.5T差に影響されます。

4. 疾患別: 何を危険信号として読むか

HCM

最大壁厚、LVEF<50%、心尖部瘤、広範LGE、NSVT/失神/家族歴を統合。

DCM

EF≤35%に加えてLGE、GLS、T1、遺伝子、RV機能で上乗せ評価。

ACM

ARVCだけでなくALVC。Ring-like LGEは悪性表現型の画像サイン。

Amyloid/Fabry

T1/ECVとLGEパターンで診断・病期・治療タイミングを支援。

Iron

T2*短縮が中核。EF低下は遅いことがあり、LGE陰性でも危険。

HCM: 突然死リスクは「肥大」+「基質」+「形態合併症」

2024 AHA/ACC HCMガイドラインの軸は、初回だけでなく1-2年ごとのSCDリスク再評価です。CMRが特に効くのは、エコーで見落としやすい心尖部瘤、最大壁厚、LVEF低下、LGE範囲の評価です。

形態リスク
最大壁厚≥30 mm、28 mm以上でも文脈により考慮。心尖部瘤はサイズに関係なくリスク因子。
組織リスク
広範LGEは成人でLV massの15%以上が目安。LGE 10%増加ごとにSCDリスク増加という文脈で解釈。
CMR所見何を意味するか報告で外さない点
最大壁厚肥大そのものがSCDリスクと連動部位、計測断面、乳頭筋/肉柱の扱い、30 mm超の有無
LVEF <50%拡張相/終末期HCM。壁菲薄化・腔拡大・線維化が進行LVEDV/LVESV、壁菲薄化、RVEF、弁逆流
心尖部瘤VT・血栓塞栓の基質瘤サイズ、血栓、瘤周囲LGE、cineでの無収縮/奇異性運動
広範LGE置換性線維化。不整脈基質定量法、閾値、%LV mass、右室接合部のみか広範か
HCM max wall thickness
HCM: 最大壁厚30 mmの症例スライド。
HCM apical aneurysm slide HCM LGE 15 percent slide

HCM cine / LGE 抽出動画

スライド内に埋め込まれていた動画を抽出し、教育用にブラウザ上で再生できるようにしました。

HCM cine loop - axial SSFP
End-stage HCM評価では静止画だけでなく壁運動・腔拡大・収縮同期性を見る。
HCM cine loop - long axis
LAX cineはLV形態・心尖部瘤・MR/flow void・壁菲薄化の把握に有用。
HCM cine loop - 4 chamber
心房拡大、僧帽弁形態、RV/RAとの関係もリスク文脈で確認。
HCM cine loop - short axis
SAX stackから最大壁厚、LV mass、LVEF、局所壁運動を計測。
HCM / LGE dynamic reference
LGE陽性部位は電気的不安定性・置換性線維化の候補基質として読む。
DCM EF less than 35
DCM: LVEF=20%の症例スライド。ICD検討の古典的な入口はEFです。
DCM meta-analysis
DCM: GLS、LGE有無/範囲、LVEF、Native T1を統合するメタ解析スライド。

DCM: EFだけでは取りこぼす不整脈基質

DCMの臨床判断では、症候性心不全で3か月以上の至適薬物療法後もLVEF≤35%ならICD検討という軸が基本です。しかし、CMRではmid-wall LGEやLGE範囲、GLS、Native T1、RV機能がEFだけでは見えないリスクを補います。

読み方: LVEFは「ポンプ性能」、LGEは「電気的不安定な傷跡」、T1/ECVは「びまん性障害」、GLSは「まだEFが落ちきる前の機能低下」を示す。
高リスクの読み臨床へのつなぎ
LVEF≤35%は古典的ICD検討軸GDMT後の再評価、デバイス適応、心不全管理
LGEmid-wall / septal / ring-likeに注意EF>35%でも遺伝子・NSVT・家族歴と合わせて上乗せ評価
遺伝子LMNA、FLNC、DSPなど家族スクリーニング、ICD閾値の再検討
RV機能RVEF低下は全身性心筋症・予後不良のサイン心不全重症度、移植/補助循環評価の文脈

DCM cine 抽出動画

DCM cine loop
DCMではLVEF・LVEDVだけでなく、RV機能やLGE有無を組み合わせる。

ACM: Ring-like LGEは「左室優位ACM」を疑う旗

ACMは従来のARVCだけではなく、ALVCや両室型を含むスペクトラムとして整理されます。Padua criteriaではCMRのLGEが診断の大きな柱となり、Ring-like LGEはALVCに特徴的な画像表現型として強調されます。

Ring-like LGE DSPFLNCLMNA 左室外層〜中層円環状の瘢痕不整脈基質
臨床ポイント: 「DCMっぽい拡大・EF低下」でも、LGEが外層優位・円環状・高リスク遺伝子に合う場合、ACMとして遺伝子検査・Holter/EP評価・家族評価へ橋渡しします。
ACM Padua criteria and ring-like LGE
Padua criteria: ARVC/ALVCを含めたACM概念とLGE。
FLNC ACM ring-like LGE DSP ACM ring-like LGE
Amyloidosis main types
AL、ATTRv、ATTRwtの病型整理。治療可能性が上がり、早期診断の価値が増大。
ATTR ECV prognosis
ATTR-CMでECVが予後規定因子として強いことを示すスライド。

心アミロイドーシス: ECVは「沈着量に近い臨床言語」

心アミロイドーシスでは、LGEパターンや心筋nullingの異常が有名ですが、リスク層別化ではNative T1とECVが重要です。特にATTR-CMではECVが死亡リスクと独立して関連する報告があり、AL-CMでもT1 mappingが予後指標になります。

病型CMRで強い所見臨床的意味
AL高T1、高ECV、びまん性/心内膜下〜貫壁LGE血液疾患治療の緊急性。心筋障害が早く進む。
ATTRv高T1/ECV、肥大型表現型、神経障害との組み合わせ遺伝性評価、TTR安定化/サイレンシング治療の文脈。
ATTRwt高ECV、LVH、右室/心房・弁・腱索/軟部組織サイン高齢男性HFpEF・AS・手根管既往で疑う。
報告の言葉: 「肥大型心筋症様」ではなく、T1/ECV高値、LGEパターン、心房拡大、壁肥厚分布、弁/心膜/胸水所見を組み合わせて、アミロイドらしさと重症度を伝える。

Fabry: 低T1から始まり、炎症・線維化で“見かけ上”変わる

Fabry病では、スフィンゴ糖脂質蓄積によりNative T1が低値になりやすい点が特徴です。しかし病変が進むと、炎症・浮腫でT2が上がり、線維化が加わるとLGEが出現し、T1が正常化〜高値側へ動くことがあります。

蓄積Native T1低下。早期検出の窓。
炎症T2上昇、inferolateral wallの障害。
線維化LGE出現。病期進行と予後悪化。
重要: 原因不明LVHの中でFabryを拾うには、HCM/アミロイド/高血圧性肥大との鑑別としてNative T1低値を積極的に読む。
Fabry progression
Fabry: 病変進行に伴うnative T1値とLGEの変化。
Fabry staging CMR
Fabry: 蓄積、炎症、線維化フェーズのマルチパラメトリック整理。
Iron overload case
頻回輸血による鉄過剰症。LGE陰性でもNative T1、T2、T2*が低値。
T2 star heart failure risk
T2*低値と1年以内心不全発生率の関連。

鉄過剰症: T2*は心筋鉄の“警報器”

鉄沈着は局所瘢痕を作る前に、磁化率効果でT2*を強く短縮させます。そのため、LGEが陰性でも安全とは言えません。講演症例ではT2*=5-7 ms、LVEF=40%で、心肺蘇生後という重症文脈です。

T2*一般的解釈臨床文脈
>20 ms心筋鉄沈着なし〜低リスク定期フォロー
10-20 ms軽〜中等度鉄沈着治療強化/間隔短縮を検討
<10 ms重症鉄沈着心不全・不整脈高リスク。迅速な治療調整が必要
<6 ms極めて高リスク短期イベントに最大限注意
注意: T2*は撮像条件・ROI・磁場強度・解析法でブレます。中隔ROI、アーチファクト除外、自施設基準値、縦断比較をセットで読む。

5. Educational Risk Workbench

講演内容を理解するための視覚化です。実際のICD適応や治療方針を決定するものではありません。

Integrated educational readout
High attention zone

LGE burden、壁厚、EF、T2*を調整すると、どのCMR所見が臨床的に強い警告になるかを表示します。

7. 臨床でのCMRレポート設計

講演内容を実務に落とすなら、レポートは「所見列挙」ではなく、リスク層別化に効く項目を構造化して返すのが重要です。

Step撮像・解析必須アウトプット臨床メッセージ
1Cine SAX/LAXLVEF/RVEF、LVEDV/LVESV、LV mass、最大壁厚、心尖部瘤、壁運動ポンプ機能と形態リスク。HCM/DCM/ACMの入口。
2LGE PSIR/IR-GRE有無、分布、%LV mass、定量法、右室接合部/中層/外層/リング状不整脈基質・予後・表現型診断。
3Native T1 + ECV基準値対比、ROI/segment、ECV、Hct反映有無アミロイド、Fabry、びまん性線維化、治療反応追跡。
4T2 mapping浮腫/炎症の有無、Fabry炎症フェーズ、心筋炎鑑別急性/活動性の病態を補足。
5T2* mapping中隔T2*、最低値、解析品質鉄過剰症の治療強度・フォロー間隔。
6統合臨床リスク因子、Holter、遺伝子、バイオマーカーとの接続CMR単独ではなく、多因子でICD/治療/家族評価へ。
推奨レポートの最後の一文: 「本CMRでは、○○により非虚血性心筋症の表現型は△△が示唆され、リスク層別化上は□□が重要所見です。臨床リスク因子、Holter、遺伝子情報と統合した判断を推奨します。」
原資料スライド全体ビュー(46枚)

各タイルをクリックすると高解像度で開きます。スライド本文・症例画像・図表の確認用です。

8. 参考文献・外部根拠

本HTMLは講演理解・教育目的の解説であり、個別患者の診断・治療・ICD適応を決定するものではありません。閾値はガイドライン・文献・施設基準値・撮像条件で変動します。