SCMR Japan WG Seminar 2026 · Expert Interactive Notes

各セッション別
専門家向け完全解説
アニメーション図解HTML

2026年7月4日開催プログラムを、心臓MRI専門家向けの学習ノートとして再構成しました。断面設定、先端CMR、定量perfusion、女性心疾患、CIED運用、リスク層別化、Quizまで、原理・臨床・pitfall・当日質問を1ファイルに統合しています。

2026/7/4 Sat 9:40–18:00JA共済ビル カンファレンスホールSessions I–VII + LuncheonOffline-ready HTML

注:本HTMLは公開プログラムの演題名から作成した教育用の専門家向け解説です。各演者の未公開内容を代弁するものではありません。診療・検査適応・安全運用は、最新の添付文書、施設手順書、学会声明、主治医/責任医の判断に従ってください。

全体像:この1日は“CMRの臨床実装”を上流から下流までつなぐ構成

午前は、断面設定という検査品質の入口から、DTI/CATCH/MRSという先端技術、そして定量perfusionのライブへ進みます。午後は、女性心疾患、CIED患者の安全運用、リスク層別化へ展開し、最後にQuizで知識を運用判断へ変換します。

I09:45–10:35CMR断面設定 まだ「手動」ですか?
II10:45–11:35一歩先を行くCMR技術
III11:45–12:45ビデオライブ:Stress quantitative perfusion CMR
L13:00–13:20Luncheon:CMR 2026 最新情報
IV13:30–14:20CMRの眼で解き明かす女性の心臓
V14:30–15:30もう迷わないCIEDs患者のCMR撮影
VI15:40–16:30CMRはリスク層別化にどれくらい使えますか?
VII16:40–17:30The SCMR JPWGS 2026 Quiz
Session I

09:45–10:35

CMR断面設定 まだ「手動」ですか?

AI / Advanced planning と手動職人技を、再現性・教育・臨床アウトカムの観点で統合するセッション

座長:奥田茂男(東京医療センター・放)

AI planning 2C / 3C / 4CSAX stack
演題タイムテーブル
Time演題所属・演者
09:45–10:00Advanced CMR planningを使用する意義三重大・放部 山畑 経博
10:00–10:15手動で十分?! ベテラン施設の立場から杏林大学・放部 福島 啓太
10:15–10:30手動で始めましたが…新規施設の立場から武内病院・放部 横谷 順希
10:30–10:35discussion

このセッションの読み方

このセッションの本質は、心臓MRIの“最初の5分”を属人芸から検証可能なプロセスへ移すことです。CMRでは真の短軸・長軸がすべての定量値の座標系になります。ここがずれると、LV/RV容積、壁運動、strain、LGEの局在、stress perfusionのセグメント対応まで連鎖的にずれます。Advanced planningは単なる時短ではなく、断面定義のばらつきを下げ、初心者教育と施設間標準化を支えるインフラです。

原理・技術レイヤー

座標系の決定

局所解剖から患者固有の心軸を再構成する。横断像・冠状断・矢状断ではなく、僧帽弁輪、心尖部、LVOT、RV流出路、心室中隔を基準に2C/3C/4C/SAXを作る。

短軸スタックの再現性

基部スライスの採用/除外、心尖部最終スライス、心房混入、RV outflowの扱いがEF・mass・stroke volumeの主要誤差源になる。

AI planningの役割

ランドマーク検出、房室弁面・心尖部推定、心腔セグメンテーション、既定プロトコルへの自動配置により、操作者間差を“検査前の品質管理項目”へ変換する。

手動計画の残存価値

先天性心疾患、術後、右胸心、強い拡大・変形、device artifact、局所目的撮像では、AI提案を解剖学的に修正できる熟練者が必要。

臨床での使いどころ

  • 自動計画を導入しても、最終判定は“計測目的に対して妥当な断面か”で行う。撮像時間短縮だけをKPIにすると、基部/心尖部の再現性を失う。
  • LGEやT1/T2 mappingをcineと同一座標で読めることが診断力になる。断面ズレは、局所線維化・浮腫・虚血のセグメント対応を曖昧にする。
  • stress perfusionでは動き補正とAHAセグメント割付に直結するため、負荷前のplanning品質が後処理の安定性を規定する。
  • 教育面では、AI提案を“正解”として使うのではなく、なぜその角度なのかを説明する教師データとして使うのが最も強い。

専門家が見るべきpitfall

  • 3CH/LVOTを僧帽弁中心と大動脈弁中心で通さず、LVOT狭窄やAR/MR評価が不安定になる。
  • SAXの基部を房室弁面より心房側に置き、LV mass/volumeが過大評価される。
  • 肥大型心筋症や拡張型心筋症で“見た目の心軸”に引っ張られ、心尖部と僧帽弁面の幾何中心を外す。
  • AI提案の断面を検証せず、アーチファクト・低SNR・術後解剖をそのまま通す。

当日聞くと深まる質問

  • Advanced planningの評価指標は、撮像時間・再撮率・基部スライス一致率・容積CVのどれで置くべきか?
  • ベテラン施設では、AIが“邪魔”になる症例と“安全網”になる症例をどう分けているか?
  • 新規施設の教育では、最初に覚えるべき断面は2C/4C/SAXのどれか?

Take-home

  • Advanced planningは時短ツールではなく座標系の標準化ツール。
  • AIは正解生成器ではなく、断面品質を可視化する第二読影者。
  • 手動技術は不要にならず、例外症例と目的特化撮像で価値が上がる。
  • 最終KPIは“短く撮れた”ではなく“定量値が再現した”。
Session II

10:45–11:35

一歩先を行くCMR技術

DTI・CATCH・MRS:形態とLGEを越え、微細構造・冠動脈壁・代謝を直接読む

座長:尾田済太郎(熊本大学・放)

DTI HA / FA / MD CATCH dark-blood + reference MRS PCr / ATP energy metabolism
演題タイムテーブル
Time演題所属・演者
10:45–11:00心臓DTI国立循環器病研究センター・放 森田 佳明
11:00–11:15CATCHによる冠動脈プラークイメージング昭和医大・循 松本 英成
11:15–11:30心臓MRS札幌医大・循 中田 圭
11:30–11:35discussion

このセッションの読み方

従来CMRは、心機能・虚血・瘢痕・浮腫を高い再現性で評価してきました。一歩先の技術は、さらに深い階層、つまり心筋線維配列、冠動脈プラーク性状、心筋エネルギー代謝に踏み込みます。DTIは心筋微細構造、CATCHは冠動脈壁のT1高信号プラーク、MRSはPCr/ATPや心筋脂肪などの代謝を、非侵襲的に定量しようとする領域です。

原理・技術レイヤー

心臓DTI

拡散テンソルから主拡散方向を推定し、helix angle、E2A、fractional anisotropy、mean diffusivityなどを得る。心臓では拍動・呼吸・低SNRが最大の敵で、motion-compensated spin echoやSTEAM/EPI、free-breathing補正が鍵になる。

CATCH

Coronary Atherosclerosis T1-weighted Characterization with integrated anatomical reference。暗血T1強調プラーク画像とbright-blood冠動脈参照像を同時/同一座標で得て、高信号プラークの局在と冠動脈走行を結びつける。

心臓MRS

31P MRSはPCr/ATP比、1H MRSは心筋内脂肪、13Cは代謝フラックスを狙う。局所化、B0 shim、呼吸/心拍同期、コイル感度、長い収集時間が実装上の制約。

研究から臨床への壁

“美しいマップ”だけでは臨床導入できない。再現性、基準値、疾患横断的なcutoff、検査時間、失敗率、治療方針を変える証拠が必要。

臨床での使いどころ

  • DTIはHCMのmyocyte disarray、DCMの線維配列破綻、MI後リモデリング、先天性心疾患の微細構造表現型に可能性がある。LGEが出る前のphenotypingとして期待されるが、現時点では研究色が強い。
  • CATCHは非造影T1強調で冠動脈high-intensity plaqueを捉える方向性があり、OCT/NIRS-IVUSが示す高リスク形態との対応を検証する技術。プラークの“狭窄率”ではなく“性状”に寄せる。
  • MRSは心不全、糖尿病性心筋症、肥大型心筋症、虚血、ミトコンドリア病、脂肪毒性などで、機能低下の前段階にある代謝異常を測る可能性がある。
  • どの技術も、単独診断ではなく cine・mapping・perfusion・LGEと合わせた多層表現型として解釈する。

専門家が見るべきpitfall

  • DTIのFA/MD変化を線維化と短絡的に同一視する。拡散指標は浮腫、配列、細胞密度、SNR、motionの合成結果。
  • CATCHの高信号をすべて不安定プラークと呼ぶ。血流、motion、partial volume、冠動脈石灰化/ステント近傍の信号に注意。
  • MRSのピーク積分をB0 shimや水抑制、ボクセル混入のQCなしで比較する。
  • 研究シーケンスの失敗率を臨床実装の議論から外す。

当日聞くと深まる質問

  • DTIではどの指標が最も臨床的に説明しやすいか:HA, E2A, FA, MD?
  • CATCHの高信号閾値は施設・装置・コイルでどう標準化するか?
  • MRSを心不全診療に入れる場合、PCr/ATPのどの再現性を要求するか?

Take-home

  • DTIは“心筋の配向”を、CATCHは“冠動脈壁の性状”を、MRSは“代謝”を読む。
  • 3技術の共通課題はSNR・motion・標準化・臨床意思決定への接続。
  • 現時点ではLGE/mapping/perfusionを置き換えるものではなく、多層phenotypeを強化する。
  • 研究導入時は、QC項目と失敗例の定義を先に決める。
Session III

11:45–12:45

ビデオライブ:Stress quantitative perfusion CMR

負荷心筋血流を“見た目”からMBF/MPRへ:撮像・AIF・モデル・臨床判断を一気通貫で理解する

座長:大田英輝(東北大学・放)

Gd first-pass AIFtissue deconvolution → MBF / MPR
演題タイムテーブル
Time演題所属・演者
11:45–12:45Stress quantitative perfusion CMR三重大・放部 高瀬 伸一

このセッションの読み方

Stress perfusion CMRは、冠動脈狭窄そのものではなく、負荷時に心筋へ十分な血流が届くかを評価します。定量perfusionでは、AIFと心筋信号の時間濃度曲線からmyocardial blood flow(MBF)を推定し、stress/rest比や予備能を用いて、心外膜冠動脈病変と微小循環障害を同じ土俵で扱えるようにします。

原理・技術レイヤー

撮像

saturation recovery first-pass imagingでGd造影剤の通過を高時間分解能で追う。dual-sequenceまたはdual-bolusはAIF飽和を避けるための設計。

AIF

LV cavityの入力関数はモデルの心臓部。飽和、partial volume、basal sliceの流入、coil sensitivity、hematocrit補正が定量値へ影響する。

モデル

Fermi deconvolution、model-independent deconvolution、distributed parameter modelなどで組織曲線を血流へ変換する。アルゴリズム差は絶対値差として残り得る。

臨床値

MBF、myocardial perfusion reserve、segmental/global flow、endocardial-to-epicardial gradientを、症状・冠動脈形態・LGE・mappingと統合する。

臨床での使いどころ

  • 心外膜冠動脈狭窄では、冠動脈支配領域に一致したstress MBF低下が典型。LGEの有無で虚血・梗塞・viabilityを分ける。
  • 冠動脈に有意狭窄がなくても、CMD/INOCAではglobalまたはびまん性のMBF/MPR低下を示すことがある。女性の胸痛診療と相性が良い。
  • dark-rim artifactはsubendocardial ischemiaと誤認しやすい。定量マップでもmotion correction失敗やAIFエラーが偽陽性を作る。
  • ビデオライブで注目すべきは、薬剤負荷の安全手順、造影剤注入、breath-hold/free-breathing、raw cineのQC、後処理での失敗例処理。

専門家が見るべきpitfall

  • MBF絶対値を装置・シーケンス・解析ソフトを越えて単純比較する。
  • rest MBFが高い頻脈/貧血/高心拍出状態でMPRだけを過小評価する。
  • 心尖部・下壁のmotion補正不良を微小循環障害と読む。
  • AIF ROIを乳頭筋や流入アーチファクトにかける。

当日聞くと深まる質問

  • 使用するstress agentと目標心拍/症状/血圧反応の記録をどう標準化しているか?
  • dual-sequence/dual-bolus/単一シーケンス補正のどれを採用し、AIF飽和をどう検出しているか?
  • 施設内cutoffは正常ボランティア、既報、または臨床アウトカムから作るべきか?

Take-home

  • 定量perfusionの本体は、AIF×組織曲線×モデル×QC。
  • 冠動脈狭窄だけでなくCMD/INOCAまで射程に入る。
  • 絶対値は魅力的だが、施設内標準化と失敗例管理なしでは危険。
  • ライブでは“上手くいった画像”より“どこで失敗を止めるか”を見る。
Session L

13:00–13:20

Luncheon:CMR 2026 最新情報

AI・定量・短時間化・患者アクセス:2026年時点でCMRの臨床実装が向かう方向

司会:北川覚也(三重大・放)

CMR AI Q fast access standardize · automate · quantify · expand
演題タイムテーブル
Time演題所属・演者
13:00–13:20CMR 2026:最新情報

このセッションの読み方

ランチョンは単なる製品紹介ではなく、午前の断面自動化・先端技術・定量perfusionと、午後の女性心疾患・CIED・リスク層別化をつなぐ“地図”として位置づけると理解しやすいです。2026年のCMRは、検査を長く複雑にする方向ではなく、標準化、自動化、定量化、患者アクセス拡大へ向かっています。

原理・技術レイヤー

標準化

施設差を小さくするprotocol、reporting、post-processing。多施設研究と日常診療の橋渡しに必須。

自動化

planning、motion correction、segmentation、perfusion quantification、LGE/scar quantificationのAI化。人の読影を置換するより、前処理とQCを強化する。

短時間化

compressed sensing、parallel imaging、free-breathing cine、single breath-hold mapping、効率的LGE。患者負担と枠運用が導入障壁。

価値の説明

CMRが診断を変えるだけでなく、治療選択、予後評価、再入院回避、device適応判断にどう寄与するかを示す必要がある。

臨床での使いどころ

  • 今後のCMR導入では、検査時間、解析時間、レポート標準化、紹介医への返し方が技術性能と同じくらい重要。
  • 定量値は“数が出る”ことより、施設内で同じ方法で積み上がることが価値になる。
  • AIは医師・技師・解析者の手作業を減らすが、QC責任をなくすものではない。
  • CIEDや不整脈、息止め困難、高齢患者に使えるプロトコルこそ臨床インパクトが大きい。

専門家が見るべきpitfall

  • 新機能を“研究で使える”段階と“保険診療で安定運用できる”段階に分けずに導入する。
  • AIの出力をブラックボックスとして受け入れ、失敗例を記録しない。
  • 定量値のreference rangeを装置・field strength・sequence差抜きで持ち込む。

当日聞くと深まる質問

  • 2026年に最も臨床運用を変える機能は、AI planning、free-breathing、定量perfusion、CIED対応のどれか?
  • 施設内で“CMRの価値”を説明するKPIは何に置くべきか?

Take-home

  • CMR 2026の軸は、標準化・自動化・定量化・アクセス改善。
  • AIは読影者の代替ではなく、検査品質を底上げする操作系。
  • 最新技術は、失敗例の定義とQCフローがあって初めて臨床技術になる。
Session IV

13:30–14:20

CMRの眼で解き明かす女性の心臓

MINOCA・SCAD/CMD・周産期心筋症:冠動脈狭窄中心の診断から、病態中心の診断へ

座長:真鍋徳子(自治医大 さいたま医療センター・放)

Chest paintroponin↑ No obstructiveCAD CMR MINOCA pattern SCAD / CMD PPCM
演題タイムテーブル
Time演題所属・演者
13:30–13:45MINOCAはりま姫路総合医療センター・循 谷口 泰代
13:45–14:00SCAD/CMD榊原記念病院・放 大滝 裕香
14:00–14:15周産期心筋症三重大・産婦 二井 理文
14:15–14:20discussion

このセッションの読み方

女性の急性胸痛・心筋障害では、冠動脈狭窄だけで説明できない病態が相対的に重要です。CMRは、心筋梗塞、心筋炎、Takotsubo、SCAD後梗塞、CMD、周産期心筋症を、cine・浮腫・mapping・LGE・perfusionで病態別に分解します。“冠動脈が詰まっていないから正常”を避けるためのセッションです。

原理・技術レイヤー

MINOCA

MIの臨床基準を満たすが、冠動脈に50%以上の閉塞性病変を認めない暫定診断。CMRは虚血性LGE、心筋炎型LGE、Takotsubo型浮腫/壁運動、正常像を分ける。

SCAD

非動脈硬化性の冠動脈解離。若年〜中年女性、妊娠/産褥、線維筋性異形成などと関連することがある。CMRは急性期の梗塞範囲、浮腫、LV機能、合併症評価に有用。

CMD/INOCA

微小血管レベルの血流予備能低下。冠動脈造影が正常でも、定量stress perfusionでglobal/territorial MBF低下として捉え得る。

周産期心筋症

妊娠末期〜産後に発症するLV収縮不全。CMRはLV/RV機能、血栓、浮腫、線維化、鑑別診断を評価するが、妊娠中の造影は原則慎重に扱う。

臨床での使いどころ

  • MINOCAでは、早期CMRほど浮腫・Takotsubo・心筋炎の検出に有利。遅れると浮腫が消え、LGEの有無に依存しやすい。
  • SCADは冠動脈診断が中心だが、CMRは“どれだけ心筋が傷んだか”を示す。治療方針と長期フォローでLV機能・瘢痕評価が重要。
  • CMDでは“見た目のperfusion defectがない”ことと“血流予備能が保たれる”ことは別。定量値と症状の対応を丁寧に見る。
  • 周産期心筋症では、産科・循環器・放射線科で、造影、授乳、薬物治療、再妊娠リスクを一体で議論する。

専門家が見るべきpitfall

  • MINOCAを最終診断名として扱い、心筋炎/Takotsubo/小梗塞/塞栓/冠攣縮の検索を止める。
  • SCAD症例でLGEが少ないから軽症と決める。急性期の解離範囲、再発リスク、冠動脈形態は別軸。
  • CMDの定量perfusionで、薬剤負荷不十分・心拍反応不良・AIFエラーを病態と誤認する。
  • 妊娠・授乳期のGBCA、腎機能、緊急性の説明を曖昧にする。

当日聞くと深まる質問

  • MINOCA疑いで理想的なCMRタイミングは施設運用上いつか?
  • SCAD後フォローでCMRを再検する基準は、症状、LVEF、LGE、冠動脈形態のどれか?
  • CMDの定量perfusion結果を、患者説明と治療選択にどう変換するか?

Take-home

  • 女性の心疾患では、非閉塞性・微小循環・産褥関連の病態を見逃さない。
  • CMRはMINOCAを最終診断から病態診断へ進める中核。
  • SCAD/CMDでは冠動脈像と心筋像を分けて考える。
  • 周産期では診断価値と造影安全性を多職種で判断する。
Session V

14:30–15:30

もう迷わないCIEDs患者のCMR撮影

改定3学会合同ステートメント後の運用:安全性、責任分界、CMR画質を同時に設計する

座長:横山健一(杏林大学・放)/石田正樹(三重大・放)

screen program monitor post-check checklist + responsibility boundary
演題タイムテーブル
Time演題所属・演者
14:30–14:55CIEDs患者の撮影 改定3学会合同ステートメントの背景と運用埼玉医科大学国際医療センター・循 加藤 律史
14:55–15:03運用の現状 杏林大学杏林大学・CE 荻原 陽
15:03–15:11運用の現状 東京女子医科大学東京女子医大・放部 椎名 勲
15:11–15:19運用の現状 三重大学三重大学・循 香川 芳彦
15:19–15:30discussion

このセッションの読み方

CIEDs患者のCMRは、“撮れるか/撮れないか”の二択から、リスク分類・事前確認・デバイス設定・監視・撮像条件・事後確認を組み合わせる運用設計へ移行しています。改定3学会合同ステートメント後の実務では、循環器、放射線科、診療放射線技師、臨床工学技士、看護師、メーカー確認の責任分界を明確にすることが成功条件です。

原理・技術レイヤー

安全リスク

静磁場による力学的作用、RF heating、gradient誘導電流、リード先端加熱、oversensing、device reset、不適切作動、電池/リード状態悪化を想定する。

患者分類

MRI conditional system、MRIカード保有、field strength条件、植込み後期間、リード種類、遺残/断線/心外膜リード、pacing依存、ICD shock設定などでリスクを層別化する。

運用フロー

依頼前screening、device情報確認、同意、直前interrogation、MRI mode設定、監視、緊急対応、直後interrogation、記録保存までを1枚のチェックリストにする。

CMR特有の画質

generator artifact、wideband LGE、bSSFP banding、胸部左側デバイスによる前壁/側壁信号低下、SAR制限下のシーケンス選択を考える。

臨床での使いどころ

  • CMR適応はCIED患者でむしろ高い。心筋症、瘢痕、心筋炎、サルコイドーシス、viability、弁膜症、腫瘍など、CMRで治療方針が変わる疾患が多い。
  • 検査可否は“デバイス名だけ”で決めない。リード組み合わせ、MRIカード、添付文書条件、患者依存性、緊急性、代替検査の情報価値を合わせる。
  • 施設間差は避けられない。重要なのは、不可理由を曖昧にせず、どの条件が満たせないのかを明文化すること。
  • CMR撮像では、diagnostic questionを絞る。すべての標準シーケンスを完遂するより、必要なcine・mapping・LGE・perfusionを安全条件内で最短に設計する。

専門家が見るべきpitfall

  • “MRI対応デバイス”という言葉だけで、lead/deviceの組み合わせ条件を確認しない。
  • pacing依存とICD shock設定の確認を検査室入室後に初めて行う。
  • SAR/B1+rms制限を守るために画質が診断不能になり、検査目的を達成できない。
  • CMR禁忌/不可を患者・紹介医に説明せず、代替案を示さない。

当日聞くと深まる質問

  • 各施設のCIED-CMR依頼から検査までのリードタイムは何日か?緊急枠は作れるか?
  • 臨床工学技士・循環器医・放射線科医の立ち会い要件をどう定義しているか?
  • wideband LGEやartifact reductionを標準プロトコルに入れているか?

Take-home

  • CIED-CMRの鍵は、機器条件ではなく多職種ワークフロー。
  • 改定後は“撮れる患者の範囲”だけでなく“説明責任”も拡大する。
  • 検査目的を絞り、安全条件内で診断に必要な最小プロトコルを組む。
  • 失敗しない施設は、チェックリスト・記録・責任分界が明確。
Session VI

15:40–16:30

CMRはリスク層別化にどれくらい使えますか?

虚血性・非虚血性・一般集団:CMRを“診断画像”から“予後画像”へ拡張する

座長:岡本聡(川口市立医療センター・循)

LVEF LGE MBF/ECV risk model event probability
演題タイムテーブル
Time演題所属・演者
15:40–15:55虚血性心疾患のリスク層別化横浜市立大学・放 加藤 真吾
15:55–16:10非虚血性心疾患のリスク層別化熊本大学・放 尾田済太郎
16:10–16:25CMRデータによる一般集団のリスク評価東京女子医大・放 長尾 充展
16:25–16:30discussion

このセッションの読み方

CMRのリスク層別化は、LVEFだけでは捉えられない“組織の危険性”を評価することです。虚血性心疾患では虚血量・梗塞サイズ・transmurality・MVO、非虚血性心疾患ではLGEパターン・線維化量・T1/ECV・T2・RV病変、一般集団ではサブクリニカルな心形態・機能・組織指標が、イベント予測に使われます。

原理・技術レイヤー

虚血性

stress perfusionで誘発虚血、LGEで梗塞サイズとviability、MVO/IMHで急性MI後リスク、LV remodelingで心不全リスクを評価する。

非虚血性

DCMのmidwall LGE、HCMのLGE burden、心サルコイドーシスの斑状LGE、アミロイドーシスのECV上昇、Fabryの低native T1など、疾患ごとの組織パターンが鍵。

一般集団

UK Biobank型の大規模CMRでは、LV/RV volume、mass、strain、心外膜脂肪、大動脈弾性、AI phenotypeが将来イベントとの関連を検討される。

モデル化

CMR単独ではなく、年齢、性別、症状、ECG、バイオマーカー、遺伝、冠動脈情報、治療歴と統合してリスクモデルを校正する。

臨床での使いどころ

  • 虚血性では、再血行再建の判断に“狭窄率”だけでなく虚血量・MBF・viability・瘢痕量を統合する。
  • NIDCMではLGEの存在と量が予後と関連し、LVEFだけでは説明しきれないarrhythmic riskを補う。ICD適応議論の補助情報として重要。
  • HCMでは最大壁厚・家族歴・失神・NSVTなどに加え、LGE burden、apical aneurysm、EF低下を総合する。
  • 一般集団リスクでは、個人への返却可能性、偽陽性、過剰診断、民族/装置差、AIモデルの外部妥当性が課題。

専門家が見るべきpitfall

  • LGE陽性/陰性だけでリスクを二分し、疾患別パターンと量を無視する。
  • T1/ECVのcutoffを装置・field strength・シーケンス・hematocrit差なしに使う。
  • 一般集団AIモデルを臨床患者にそのまま外挿する。
  • 予後指標を示しても、それが治療変更につながるかを議論しない。

当日聞くと深まる質問

  • 虚血性心疾患で、定量perfusionとLGEをどの順でレポートすべきか?
  • NIDCM/HCM/サルコイドーシスで、LGE量の閾値を施設としてどう扱うか?
  • 一般集団CMRリスク評価を健診に入れる場合、結果返却とフォロー体制をどう設計するか?

Take-home

  • リスク層別化CMRの中心は、LVEFではなく組織性状と虚血/瘢痕量。
  • 虚血性ではperfusion×LGE、非虚血性ではLGE pattern×mappingが軸。
  • 一般集団リスクは魅力的だが、外部妥当性と過剰診断が課題。
  • 予後画像は、治療方針を変えて初めて臨床価値になる。
Session VII

16:40–17:30

The SCMR JPWGS 2026 Quiz

一日の学びを臨床判断へ変換する:知識確認ではなく“使える判断軸”の定着

司会:後藤義崇(岡部病院/福岡和白病院・循)/橋本直哉(三重大・放)

? QC Safety Clinical
演題タイムテーブル
Time演題所属・演者
16:40–17:30The SCMR JPWGS 2026 Quiz

このセッションの読み方

Quizは余興ではなく、断面設定、先端技術、定量perfusion、女性心疾患、CIED運用、リスク層別化を、明日からの判断に変換する最終演習です。専門家向けには“正答暗記”より、どの情報を確認すれば安全・妥当なCMR判断になるかを鍛える場として使うのが有効です。

原理・技術レイヤー

判断の単位

単語ではなく症例シナリオで考える。例:胸痛+troponin上昇+非閉塞性冠動脈なら、CMR timing、cine、T2/T1、LGE、perfusionの順に判断。

品質管理

どの問題も“画像が正しい前提”ではなく、断面、motion、AIF、device条件、mapping QCを確認する。

多職種性

CMRは医師だけの検査ではない。技師、CE、看護師、循環器、放射線科、紹介医が同じ言葉で判断する必要がある。

明日への実装

Quizで間違えた領域は、施設プロトコル、依頼票、チェックリスト、レポートテンプレートの改善点として持ち帰る。

臨床での使いどころ

  • Session Iの断面設定は、すべての後処理の前提。
  • Session IIの先端技術は、診断置換ではなく病態階層を増やす。
  • Session III/IVは、胸痛診療を冠動脈狭窄中心から血流・組織・女性病態へ拡張する。
  • Session V/VIは、CMRを安全運用と予後判断へつなげる。

専門家が見るべきpitfall

  • 正解だけを覚え、施設での実装条件を確認しない。
  • 文献的正解と自施設で安全にできることを混同する。
  • Quizを個人の知識評価で終わらせ、チーム運用改善へ落とさない。

当日聞くと深まる質問

  • 今日の内容で、自施設プロトコルを1つ変えるなら何か?
  • 依頼医に返すレポート表現で、最も改善余地がある領域はどこか?
  • CIED、qPerfusion、女性MINOCAのうち、最初にチェックリスト化すべきものはどれか?

Take-home

  • Quizは知識テストではなく、施設運用の穴を見つける最終QC。
  • 間違えた問題は、プロトコル・依頼票・レポートテンプレート改善へ落とす。
  • 専門家ほど、答えより前提条件を確認する。

Interactive Quiz Lab:当日の予習・復習用

各セッションの判断軸を確認するミニQuizです。選択肢を押すと正誤と解説が表示されます。

1. SAX stackの基部スライスを決める際、最も直接的にLV容積・massの誤差へつながるものは?

基部スライスの採用/除外はLV volume/massの主要誤差源。

2. 心臓DTIで臨床的に見たい情報として最も本質的なものは?

DTIは心筋微細構造の非侵襲的表現型を狙う。

3. CATCHの強みを最もよく表す説明は?

CATCHはdark-blood T1w plaque imagingとbright-blood anatomical referenceの統合が特徴。

4. 定量perfusionで絶対MBFを読む前に必ず確認すべきものは?

AIF飽和/ROI/motion correction不良はMBFの偽異常を作る。

5. MINOCAにおけるCMRの位置づけとして適切なのは?

CMRはMINOCAを病態診断へ進める中心的検査。

6. CIED-CMRで最も重要な運用要素は?

安全性は多職種フローと記録で担保する。

7. 非虚血性拡張型心筋症のリスク層別化で、LVEFだけでは補えない情報は?

LGE presence/extentはNIDCMの予後と関連する。

8. 2026年のCMR実装で重要な方向性は?

臨床導入では品質を保った短時間化と再現性が価値になる。

Score: 0 / 8

参照文献・ガイドライン

解説の土台にした公開文献・ガイドラインです。最新運用、特にCIED・定量perfusion・安全性は、必ず原典と施設手順書で確認してください。

  1. SCMR standardized CMR protocols: 2020 updateCMR標準プロトコル、検査設計、臨床適応の基本文献。
  2. SCMR publications / guidelines and position statementsSCMRの公式ガイドライン一覧。
  3. SCMR expert consensus statement on quantitative myocardial perfusion CMR定量perfusion CMRの撮像・解析標準化。
  4. SCMR expert consensus statement for CMR in patients with CIEDsCIED患者におけるCMRの安全性・実装。
  5. 日本医学放射線学会:条件付きMRI対応心臓植込みデバイス患者のMRI検査の施設基準・実施条件 2024改訂日本の3学会合同ステートメント関連文書。
  6. 心臓植込みデバイス患者のMRI検査に関する運用指針 3学会合同ステートメント改訂 PDF2024年1月12日改訂の国内運用指針。
  7. Diffusion Tensor Cardiovascular Magnetic Resonance Imaging: A Clinical Perspective心臓DTIの微細構造指標と臨床応用。
  8. Coronary Atherosclerosis T1-weighted Characterization with Integrated Anatomical Reference(CATCH)CATCH技術の原著。
  9. Coronary High-Intensity Plaques at T1-weighted MRI in Patients with Stable Coronary Artery DiseaseCATCHによるhigh-intensity plaque評価。
  10. AHA Scientific Statement: Spontaneous Coronary Artery DissectionSCADの病態・診断・管理。
  11. ACC: MINOCA from A to ZMINOCAにおけるCMRの診断的役割の概説。
  12. Cardiovascular magnetic resonance in women with cardiovascular disease女性のACS・CMR活用。
  13. JAMA 2024: Risk stratification in nonischemic dilated cardiomyopathy using CMRNIDCMにおけるLGE等の予後評価。
  14. SCMR/ESC consensus: myocardial T1 mapping and extracellular volume quantificationT1/ECV定量の基礎と標準化。